契約ガイドライン(データ編)の構成と外注に関わる記述

確認日 2026-10-25

  • 経済産業省の契約ガイドライン(データ編)は、平成30年6月に初版、令和元年12月に1.1版が出ています。章立ては、総論、対象・構成・活用、法的な基礎知識、「データ提供型」「データ創出型」「データ共用型(プラットフォーム型)」の契約です。
  • ガイドラインの脚注は、データのクレンジングを「表記ゆれの補正等によってデータの整合性や質を高めること」と説明しています。派生データは「データを加工、分析、編集、統合等することによって新たに生じたデータ」です。
  • 成果物の権利について、公正取引委員会の指針を引き、取引上優越した地位にある委託者が受託者の権利を一方的に譲渡させるなどの場合は、優越的地位の濫用として問題を生じやすい、と述べています。

章立て(目次)

章内容(目次の見出し)
第1 総論目的/データ流通・利活用の重要性と課題/契約の複雑化・高度化とガイドラインの意義/イノベーションの促進/国際協調の意義/データ契約に関連する政府における取組み
第2 ガイドラインの対象・構成・活用想定読者/契約類型とガイドラインの全体構成/交渉の場面での活用/AI編との関係
第3 データ契約を検討するにあたっての法的な基礎知識データの法的性質および分類等/データ流出や不正利用を防止する各種手段/適正な対価・利益の分配
第4 「データ提供型」契約一方当事者から他方当事者へのデータの提供。構造・主な法的な論点・取決め方法
第5 「データ創出型」契約複数当事者が関与して創出されるデータの取扱い。構造・主な法的論点・取決め方法
第6 「データ共用型(プラットフォーム型)」契約プラットフォームを利用したデータの共用。構造・検討事項・法的論点

出典: 経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(データ編)」1.1版(令和元年12月)(目次、確認日 2026-10-24)。

データのクレンジングと派生データの定義

データのクレンジングとは、表記ゆれの補正等によってデータの整合性や質を高めることをいう。

経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(データ編)」1.1版(令和元年12月) 脚注18

本ガイドライン(データ編)において、派生データとは、データを加工、分析、編集、統合等することによって新たに生じたデータをいう。

経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(データ編)」1.1版(令和元年12月)

成果物の権利と優越的地位の濫用

ガイドラインの脚注(14)は、成果物の権利について、公正取引委員会の「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法の指針」を引いて、次のように述べています。

情報成果物の役務の委託取引において、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、当該成果物が自己との委託取引の過程で得られたことまたは自己の費用負担により作成されたことを理由として、一方的に、これらの受託者の権利を自己に譲渡させたり、当該成果物等を役務の委託取引の趣旨に反しない範囲で他の目的のために利用することを制限する場合等には、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすいとされる

経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(データ編)」1.1版(令和元年12月) 脚注14

派生データと知的財産権の扱い(第4、30〜32頁)

第4は、一方当事者(データ提供者)から他方当事者(データ受領者)へデータを提供する契約を扱います。提供データを加工・分析・編集・統合等して生じるデータの利用権限について、次のように書かれています。データ整備の外注がこの類型に当たるかは、このサイトでは判断しません。

データ提供者から提供された提供データが何の整理もされていない生のデータであることもあり、そのデータを加工・分析・編集・統合等することによって、新たな知見・価値を伴うデータになることもあり得る。このような派生データの利用権限がデータ提供者にもあるのか、それともデータ受領者のみにあるのかは一義的には定まらない

経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(データ編)」1.1版(令和元年12月) 第4 2 (脚注の番号は省略)

契約書において派生データを定義したうえで、派生データの利用権限の有無について明らかにしておくことが望ましい。

経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(データ編)」1.1版(令和元年12月) 第4 2

この生み出された知的財産権の帰属を当事者で変更するのであれば、後日紛争とならないように提供データから生じた知的財産権の帰属についても契約の中で明確に定めておくことが望ましい。

経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(データ編)」1.1版(令和元年12月) 第4 2(知的財産権)

データ提供者・データ受領者のどちらが発注側かは、契約の組み方で変わります。条文ではなく手引きの記述で、法的な拘束力はありません。

データ提供の要請と下請法(第5、64〜65頁)

第5は、複数当事者が関与して創出されるデータの扱いを扱い、競争法の観点で次のように書いています(ガイドラインは令和元年12月の版で、旧名称の「下請法」と当時の条番号で書かれています。現行の条番号への読み替えは、このサイトでは確認していません)。

下請法の適用がある場合には、不当な経済上の利益の提供要請の禁止(下請法 4 条 2 項 3 号)に該当する可能性が生じ得る。

経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(データ編)」1.1版(令和元年12月) 第5 2「独占禁止法・下請法」

このページで確認していないこと

  • 契約の類型ごとの検討事項のうち、第4の派生データの節(30〜32頁)と第5の独占禁止法・下請法の節(64〜65頁)以外の本文、第6、第7のモデル契約書案は読んでいません。データ整備の外注が、どの類型に当たるかも判断しません。
  • 令和元年12月の1.1版より新しい版は、検索では見つかりませんでした。経済産業省のページは直接開けず、確認できていません。
  • 2025年2月に経済産業省が公表した「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」は、アノテーション外注の契約観点のページに一部を載せています(プレスリリースのPDFは403でしたが、別のURLで取得できました)。

よくある質問

このガイドラインに、データ整備やアノテーションの外注契約のひな形はありますか。

このサイトでは、データ編の目次と、クレンジング・派生データの定義、成果物の権利の脚注を確認しました。外注契約のひな形や、アノテーション専用の記述があるかは、本文を通して読んでおらず、確認していません。